1. 令和8年3月23日公布・施行、ドローン飛行ルールの大きな転換点
令和8年(2026年)3月23日、航空法施行規則の一部を改正する省令が公布・施行されました。
今回の改正で注目すべきは、無人航空機の飛行方法に関する規制(航空法第132条の86第2項から第4項)の一部適用が除外されるケースが新たに追加された点です。
具体的には、航空法施行規則第236条の82に新たな項目(第2号)が新設され、これまで事前の許可や承認が必須であった特定の飛行について、一定の条件を満たすことで「特定飛行」のルールに従わずに飛行させることが可能となりました。
これは、日本国内で急速に進むスマート農業や林業でのドローン活用を、より安全かつ円滑に促進するための画期的な規制緩和と言えるでしょう。
2. 飛行場所と高度の限定
今回の改正で新設された緩和措置が適用されるのは、飛行させる場所が厳格に定義されています。
対象となるのは、ドローンを飛行させる者や関係者が所有、または管理する土地です。
具体的には、現在農業に使用されている「農地」、または林業に使用されている「森林」の区域内に限られます。
さらに、これらの土地に隣接し、かつ一体となって農林業の用に供されている農業用道路その他の土地も含まれます。
高度についても厳しい制限があり、地表もしくは水面、または農作物(樹木や農林産物を含む)の上端から「4メートル以下」の高さの空域で飛行させなければなりません。
この「低空飛行」が安全確保の前提となっています。
3. 機体と操縦者の要件
規制緩和を受けるためには、機体性能や操縦者の能力にも一定の条件があります。
まず機体については、国土交通大臣が定める機能および性能の基準に適合している必要があります。
また、特定の飛行方法(夜間飛行、目視外飛行、人または物件から30m未満での飛行)によらずに飛行させる場合、総重量が25kg未満の機体であることが求められます。
操縦者に関しては、安全に飛行させるために必要な知識および能力として、国土交通大臣が定めるものを有していることが条件となります。
また、目視内での操作や特定の安全確保手段を講じない場合には、原則として「自動操縦」により飛行させることが義務付けられています。
4. 物件投下と危険物輸送
農業利用において不可欠な「農薬散布」についても、今回の改正で明確な基準が示されました。
農薬のように、「人に危害を与え、または他の物件を損傷するおそれがある物件」を輸送・散布する場合、国土交通大臣が定めるものを適切に使用することが求められます。
また、飛行の安全性を持続させるため、機体には故障や不具合が生じた際に安全を確保する機能(またはそれに類する機能)を備えなければなりません。
加えて、無人航空機の飛行経路下に地上または水上の物件が存在しないこと、および補助者の配置や第三者の立入りを管理する措置を講じていることが必須条件となっています。
5. 実務への影響
これまでの第236条の82(改正後の第1号)では、十分な強度を持つ「30メートル以下の紐等」で繋ぎ、立入管理措置を講じる場合に限り、特定のルールが免除されていました。
今回の改正で新設されたルール(第2号)は、この「紐による係留」を必要としない点が最大の特徴です。
農地や森林という限定された空間で、かつ高度4メートル以下という極めて低い位置での運用であれば、係留なしの自動操縦でも、一定の安全性が担保されると判断された形です。
この改正により農業現場での作業効率が飛躍的に向上すると期待しています。
ただし、「大臣が定める基準」や「知識能力」の証明など、遵守すべき細則は依然として存在します。
これらを適切にクリアし、法令を遵守した運用を行うことが、持続可能なスマート農業の鍵となります。
6. まとめ
令和8年3月23日に施行された航空法施行規則第236条の82の改正は、農業・林業におけるドローン活用のハードルを下げる重要な一歩となりました。
- 場所の限定:自身や関係者が所有・管理する農地や森林の区域内であること。
- 高度制限:作物の上端などから4メートル以下の低空飛行であること。
- 機体・操縦者:25kg未満の機体、大臣定める基準の遵守、操縦者の知識能力の保持、および原則自動操縦であること。
- 農薬散布:危険物輸送や物件投下に関する安全基準を満たすこと。
これまでの「紐で繋ぐ(係留)」という制約なしに、農地での柔軟な運用が可能となったことは、農薬散布や生育調査の効率化に直結します。
しかし、緩和の対象となるのはあくまで「高度4メートル以下」などの厳しい条件を満たした場合のみです。
ルールを正しく理解し、安全な運用を心がけましょう。


