ドローンを使った獣害対策(航空法第132条の92の特例)

1. 航空法第132条の92の特例

航空法第132条の92の特例とは、国や地方公共団体またはその依頼を受けた者が、捜索や救助などの緊急性が高い目的でドローンを飛行させる際、通常の飛行許可・承認手続きを不要とする制度です。

2024年11月の運用ガイドライン改正などを経て、2025年12月熊などの出没による人身被害防止対策もこの特例の対象となり得ることが明確化されました。

以下に、この特例の内容と獣害対策における運用についてまとめます。

① 特例の概要と対象者

この制度は、災害や事故などの緊急時に迅速な対応を可能にするためのものです。

対象者(特例適用者)は、国や地方公共団体、またはこれらから依頼を受けた民間事業者などです。

適用条件は、人命や財産に急迫した危難がある場合で、通常の許可申請を行う時間的猶予がない「緊急性」があること。

② 熊等の獣害対策への適用

市街地への熊の侵入など、人命に危険が及ぶ恐れがある獣害全般に適用されます。

熊等の探索、行動範囲の確認、地域住民の避難誘導などを通じて、死傷事故を未然に防ぐことが目的です。

通常は大臣の許可・承認が必要な「夜間飛行」や「目視外飛行」であっても、手続きなしで即座に実施可能となります。

③ 不要となる手続き

この特例が適用される場合、以下の規定の適用が除外されます。

  • 飛行禁止空域(150m以上の上空、空港等周辺の上空、DID地区、緊急用務空域)での飛行禁止。(航空法132条の85)
  • 飛行の方法(夜間飛行、目視外飛行、30m未満の距離での飛行、イベント上空、物件輸送、物件投下)の制限。(航空法132条の86、ただし第1項は除く)
  • 第三者立入管理措置
  • 飛行計画の通報(航空法132条の88)
  • 飛行日誌の作成・携行(航空法132条の89)

※ただし、150m以上の上空や空港等周辺の上空で飛ばす場合は、空港等の管理者又は空域を管轄する関係機関と調整した後、当該空域の場所を管轄する空港事務所に通知することが必要です。

④ 飛行時の安全確保義務

手続きが免除される一方で、飛行の安全を確保する責務が解除されるわけではありません。特例適用者は以下の対応を自主的に行う必要があります。

  • 安全確保:許可を受けた場合と同程度の安全確保特例適用者の責任において行う必要があります。
  • 有人機への配慮:捜索・救助を行う航空機(ヘリコプター等)が周辺にいる場合は、飛行を中止するか十分な距離を保つことが必要です。
  • 飛行マニュアルの策定:状況に応じた実施体制や安全管理体制を定めた飛行マニュアルに基づき飛行することが望ましいとされています。

この特例により、熊などの野生動物が住民を襲うリスクがある際に、ドローンを即座に投入して迅速な避難誘導や被害拡大防止を図ることが可能となっています。

2. 対策の要点

① 鳥獣害対策(猪・鹿など)

  • 総合的な防除と生息環境管理:市町村が策定する「被害防止計画」に基づき、侵入防止柵(広域柵)の整備、捕獲機材の導入、追い払い、刈払い等による生息環境管理を総合的に支援します。
  • ICT・新技術の活用:罠にセンサーを設置して遠隔で状況を監視するシステムや、ドローン、AI画像解析を用いた行動把握により、見回りの負担軽減と効率的な捕獲を推進します。
  • 個体数調整と利活用:増えすぎた個体数の削減(捕獲)を強化するとともに、捕獲個体の処理加工施設の整備やジビエとしての利用拡大を図ります。
  • 人材の育成と確保:捕獲を担う人材(ガバメントハンターなど)の育成や、認定鳥獣捕獲等事業者の体制強化を支援します。

② 虫害対策(農業害虫・外来生物)

  • 重要病害虫の侵入・拡散防止:未発生または一部発生している重要病害虫(ミカンコミバエ種群など)に対し、薬剤散布、発生調査、根絶防除を交付金により支援します。
  • AI・デジタル技術による調査高度化:ドローン空撮やAIを用いて、圃場内の被害葉(白変葉など)を自動検知し、発生状況を面的に把握する手法を確立します。
  • データ駆動型の発生予測:気象データやフェロモントラップのデータを活用し、有効積算温度シミュレーションによって害虫の発生ピーク日を予測する精度の向上を図ります。
  • 特定外来生物の防除:生態系等に被害を及ぼす特定外来生物の分布拡大抑制や根絶に向けた、地方公共団体の戦略策定や防除活動を支援します。

③ 熊対策

  • 出没時の緊急対応:警察官によるライフル銃の使用を含む迅速な駆除体制の構築や、市町村が速やかに判断・実行できる「緊急銃猟制度(2025年9月1日施行)」の運用を強化します。
  • 棲み分けの強化(出没防止):人の生活圏への侵入を防ぐため、藪の刈払いによる緩衝帯の整備、放任果樹(柿など)の除去、二重電気柵や強固な侵入防止柵の設置を推進します。
  • ドローンによる探索と監視:住民の安全確保のため、赤外線カメラ搭載ドローン等を用いて、市街地付近のクマの頭数や侵入経路を迅速に把握します。
  • 個体数管理の徹底:科学的根拠に基づき、春期の捕獲推進や広域的な個体数調整を実施します。
  • 作業者の安全確保:農業者や捕獲従事者の安全を守るため、クマスプレーの導入や保険加入への支援、多言語による注意喚起情報の発信を行います。

3. 主な事例

  • 秋田県秋田市(熊対策):自治体の依頼を受けたドローン協会が、赤外線カメラ搭載機を用いて夜間にクマの行動範囲調査を実施。
    航空法第132条の92の特例を適用し、許可なしで迅速な探索と住民への情報共有を行いました。
  • 岡山県笠岡市 真鍋島(鳥獣害対策):離島特有の課題であるイノシシ被害に対し、鳥獣ワナ監視システムの導入、ハンティングドローンによる追い込み(巻き狩り)、AI画像解析による行動把握を組み合わせた「スマート鳥獣対策」を実証しました。
  • 石川県(農業虫害対策):AIとドローンを活用し、ダイズの「ハスモンヨトウ」による白変葉や「ウコンノメイガ」の葉巻被害の検知、およびフェロモントラップでの自動カウント技術の実証を行いました。

4. まとめ

航空法第132条の92の特例は、国や地方公共団体、またはその依頼を受けた者が、捜索や救助を目的とした緊急性の高い飛行を行う際に、通常の飛行許可・承認手続きを不要とする制度です。

特筆すべきは、2025年12月から熊などの出没による人身被害防止対策がこの「捜索又は救助」に該当し得ることが明確化された点です。

市街地にクマが侵入するなど人命に急迫した危難がある場合、通常は大臣の許可を要する「夜間飛行」や「目視外飛行」であっても、手続きなしで即座に実施可能となります。

具体的な事例として、秋田県秋田市では自治体の依頼を受けた民間事業者が赤外線カメラ搭載ドローンを使用し、夜間にクマの侵入経路や個体数を把握し、迅速な避難誘導に役立てました。

ただし、特例適用時であっても飛行の安全を確保する責務は解除されません。

特例適用者は、有人機の航行妨げないよう十分な距離を保つことや、第三者の安全確保を自主的に行い、状況に応じたマニュアルに基づき運用することが求められます。

この制度により、一分一秒を争う獣害現場での機動的なドローン活用が期待されています。

出典:2025.11.28航空法第132条の92の特例適用の対象となり得る事例の追加について(国交省)

鳥獣被害対策に活用出来る機器情報(農林水産省)

クマに関する各種情報・取組(環境省)