ドローンの歴史

1. ドローン年表(時系列)

① 先駆的な遠隔操作の実験(19世紀〜1900年代)

⑴ ニコラ・テスラによる無線遠隔操縦の公開実演(1898)

1898年、ニコラ・テスラは無線で操縦する小型船をマディソンスクエアガーデンで公開実演し、無線遠隔制御の原理を示しました。これが「遠隔操作可能な航行体」の早期例です。

⑵ レオナルド・トーレス=ケベドによる船の遠隔操縦実験(1905)

スペインの技術者レオナルド・トーレス=ケベドは1905年に「Telekine(1902年に発明された、無線信号で機械を遠隔操作する技術や装置の名称)」を用いて遠隔操縦の実験を成功させ、水上艇の無線操縦を実証しました(遠隔制御技術の発展史上の重要事例)。

② 第一次世界大戦〜第二次世界大戦期の「初期無人機」

⑴ ケタリング・バグ(1917–1918)

米国のチャールズ・ケタリングが開発した「Kettering Bug(ケタリング・バグ)」は、事前設定で飛行後に着弾を狙う「航空トーピード(航空魚雷)」で、1918年に試験飛行が行われました。現代の巡航ミサイルや無人機の先駆的な試作機と評価されています。

⑵ 「Queen Bee」などの目標機(1930年代)

英国では1930年代に、操縦席を外して無線で操縦する目標機(主に軍事訓練でミサイルや砲の標的となる航空機や無人機のこと)が開発され、「Queen Bee」はその代表例で、1935年ごろに遠隔制御での運用が始まりました。
これがドローンの原型とされる。
アメリカ軍がイギリスの技術を取り入れ、「Drone(雄バチ)」という名称が広まるきっかけとなる。

⑶ Radioplane OQ-2(第2次大戦期の大量生産目標機、1939~1940年代)

米国のRadioplane社のOQ-2は、米軍向けに大量生産された最初の無人航空機のひとつで、主に射撃訓練用の標的機として広く用いられました。

③ 戦後~冷戦期の軍事用無人機の発展(1950年代〜1970年代)

ライアン・ファイアビー(1951~)

1951年に初飛行し、1950年代以降にジェット化されたターゲット/無人機シリーズとして長期間使われたのが Ryan Firebee。以降、無人機は目標機だけでなく偵察や電子戦用途へ拡大

④ 「監視・偵察用途」の近代的無人機(1970年代〜1980年代)

⑴ タディラン・マスティフ(1973頃)

1973年頃に開発されたイスラエルのタディラン・マスティフは、長時間滞空とリアルタイム映像伝送を有し、「近代的な偵察無人航空機」の先駆けの一つとされまています。

⑵ IAI スカウトと実戦投入(1979前後〜1980年代)

イスラエルのIAI(Israel Aircraft Industries)社が1970年代末に開発したスカウトなどが1979年頃に実機化され、1982年のレバノン戦(ベカー谷作戦等)で偵察用途に実用的に運用され、以後軍事用無人航空機の実戦利用が本格化しました。

⑤ 軍事用途の高度化と商業シーンの萌芽(1990年代〜2000年代)

1980〜2000年代における軍事用無人航空機の多岐化

衛星通信やGPS、長時間滞空センサーの進歩により、偵察・標的指定・電子戦・長距離攻撃等、多用途無人航空機が発展。プレデターやGlobal Hawk、Heron等が登場。
アメリカ軍がウサマ・ビンラディンを監視するためにプレデターを使用し、ドローンが兵器として活用される代表例となる。

⑥ コンシューマー、産業用ドローンの爆発的普及(2010年代以降)

⑴ DJIの台頭とコンシューマードローン普及(2006創業、Phantom等で普及加速)

中国のDJI社は2006年に創立され、2013年に「Phantom」をはじめとする「組み立て不要・GPS搭載のReady-to-Fly」型コンシューマードローンで世界市場を席巻しました。これにより撮影用途・点検・測量・農業など民間用途の普及が急速に進みました

⑵ 商用・業務利用の拡大と規制整備(2010年代〜現在)

コンシューマーと産業の普及に伴い、多くの国で航空法や無人航空機に関する運用規制(機体登録、飛行許可、リモートIDなど)が整備されていきました(国ごとの規制は異なるため、詳細は特定の国・年度で確認が必要です)。
日本のドローンの約70%が中国のDJI社製です。

2. まとめ

  • 「遠隔操縦」の概念は19世紀末(ニコラ・テスラの実演)に既に存在し、その後の100年で軍事目的で技術が磨かれ、さらに1960〜80年代にかけて監視用途の実用機が開発されました。
  • 第2次世界大戦期の大量生産目標機(Radioplane等)や冷戦〜その後のターゲット・偵察機の進化が無人航空機の基礎を作りました。
  • 1970年代〜1980年代にかけて、イスラエル等が「戦場で使える偵察用無人航空機」を実戦投入し、現代の軍事用無人航空機運用の基盤が形成されました。
  • 2010年代以降は中国のDJI社などにより消費者向け・産業向け機体が爆発的に普及し、民間用途の可能性と同時に法規制の整備が進みました。

この年表は「技術・運用の大きな潮流」を中心に作成しました。

歴史を押さえると「技術は軍事→研究→民間へ」という流れが分かります。現在は民間利用が急増しており、法制度(機体登録、飛行許可・承認、リモートID、型式認証等)を適切に遵守することが重要です。