1. レベル4飛行とは?
レベル4飛行とは、無人航空機(ドローン)における「有人地帯での目視外飛行(補助者なし、第三者上空を飛行可能)」を指す飛行区分です。
つまり、操縦者がドローンを直接目で見ていない状態でも、人や建物のある場所(=市街地・住宅地など)の上空を飛行できる、もっともリスクの高い飛行レベル(カテゴリーⅢ飛行)です。
この制度は、2022年12月5日の航空法改正で導入されました。
これら定義により、従来は困難とされていた都市部や住宅地上空でのドローン運用、例えば宅配、都市部での測量・点検、災害時の救助活動などが法的に可能となる道が開かれました。
2. レベル4飛行と他の飛行レベルとの違い
① 飛行レベルの種類
ドローンの飛行は、リスクの程度に応じて「レベル1〜4」に区分されています。
- レベル1:目視内での手動操縦
- レベル2:目視内での自動・自律飛行
- レベル3:無人地帯における目視外飛行
- レベル4:有人地帯における補助者なし目視外飛行
また、2023年12月に「レベル3.5」というレベル3とレベル4の中間の飛行区分も新設されました。
② レベル4飛行とレベル3.5飛行の違い
| 飛行区分 | 飛行環境 | 補助者 | 第三者上空(有人地帯) | コメント |
|---|---|---|---|---|
| レベル3.5 | 無人地帯(2025年10月29日からDID地区でも可能) | 補助者なし(機上カメラに代替、立入管理措置必要) | 飛行経路下に「第三者がいないこと」が前提 | 原則無人地帯での飛行、DID地区上空も飛行できるが、第三者上空は飛行不可 |
| レベル4 | 有人地帯 | 補助者なし(立入管理措置不要) | 「第三者上空」を飛行できる | 市街地・住宅地など不特定多数がいる場所でも飛行可能。最大リスク区分 |
3. レベル4飛行を行う条件
レベル4飛行を合法かつ安全に行うには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
- 飛ばすドローンは、第一種機体認証を受けていること。
- 操縦者は、一等無人航空機操縦士の技能証明(国家資格)を保有していること。
- 第三者賠償責任保険に加入していること。
- 飛行ごとに、国土交通大臣の許可・承認を受けること。
- 飛行経路や日時、運航体制、安全管理計画など、あらかじめ定められた運航ルール(飛行マニュアル作成、飛行計画、安全対策など)を整備・遵守すること。
4. レベル4飛行の事例
実際にレベル4飛行として許可・実証されたケースがあります。
代表的なものを紹介します。
| 時期 | 場所 | 実施者 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 2023年3月24日 | 東京都奥多摩町 | 日本郵便 | レベル4初飛行、都市近郊の奥多摩郵便局から個人宅への荷物の配送 |
| 2023年11月6日~9日 | 沖縄県久米島町 | ANAホールディングス | 久米島町内のスーパーから個人宅までの食料品・日用品の配送 |
| 2023年12月14日~20日 | 東京都檜原村 | KDDIスマートドローンを含む6社 | 檜原村内の檜原診療所から同村内桧原サナホーム(特別養護老人ホーム)までの医薬品の輸送 |
人のいる地域、かつ補助者なしで目視外飛行が可能となったため、従来困難だったこうした用途への応用が期待されています。
5. レベル4飛行の注意点
① 飛行許可承認申請手続き
飛行ごとに、国土交通大臣への許可または承認申請が必要になります。
申請しないで飛行すると違法です。
飛行経路や日時、機体、操縦者、運航方法、安全管理計画などを詳細に提出する必要があります。
② 安全管理とリスク評価
飛行前に「地上リスク」「空中リスク」を評価し、それに応じた安全目標と対策を設定します。
例えば、落下・墜落対策、衝突防止、非常時のフェールセーフ機能、モニタリング体制などを整備します。
飛行マニュアルの作成、飛行記録(ログ)、万が一の事故報告制度など、運用管理体制を整える必要があります。
③ 第三者賠償責任保険
第三者がいる上空を飛ぶため、墜落や落下など事故のリスクに備えて、第三者賠償責任保険への加入が必要です。
無人航空機飛行許可承認申請において、事故発生時の補償を確実にするための措置で、保険の加入と有効性を証明する必要があります。
④ 自治体のルール
自治体によっては独自の指針や条例がある場合があるため、飛行場所の自治体のルール確認も忘れてはいけません。
6. レベル4飛行でできること
レベル4飛行が可能になることで、以下のような用途・活用が現実的になります。
- 都市部や住宅地での ドローン宅配・物流(離島のみならず、都市近郊も含む)。
- 都市部・公共施設・住宅地などでの 測量・点検・インフラ保守(橋梁、送電線、建築物、工場設備など)や 建設現場での空撮・管理。
- 災害対策、救援物資輸送、被災地の状況確認 。
被災地が市街地でも補助者なしで目視外飛行が可能になるため、迅速な対応が期待されます。 - イベント会場、スタジアム、商業施設などでの空撮・警備・監視 。
多数の人が集まる場所でのドローン活用。
7. まとめ
レベル4飛行は、有人地帯での補助者なし目視外飛行(第三者上空を飛行)、つまり人や建物のある場所の上空を、安全性確保の下でドローンが単独で飛ぶ 最上位の飛行区分です。
この区分の導入により、これまで法的に難しかった都市部ドローン物流、宅配、インフラ点検、災害対応などの幅広い社会実装が現実味を帯びてきました。
ただし実施には、第一種機体認証、国家資格である一等無人航空機操縦者技能証明、第三者賠償責任保険加入、国土交通大臣への飛行許可・承認、運航管理体制、安全対策など、多くの要件があります。
レベル4飛行では、ドローンの利用範囲が大幅に広がり、より多くの業務での利活用が期待されています。



