1. 電波法とドローン飛行の基礎知識
① 電波法とは?
電波法は、電波の公平且つ能率的な利用を確保することによつて、公共の福祉を増進することを目的として制定された法律です。
電波は誰のものでもなく公共の資源であるため、下記のようなルールが定められています。
- 勝手に強い電波を出さない
- 混信・妨害を起こさない
- 技術基準を満たした機器を使う
ドローンは「無線操縦」「映像伝送」などで電波を使用するため、航空法とは別に電波法の規制を受ける点が重要です。
② ドローンと電波法の関係
ドローン飛行で使われる電波の主な用途は以下のとおりです。
- 操縦用通信(送信機 → 機体)
- テレメトリ通信(機体 → 送信機、バッテリ残量や高度などの情報送信)
- 映像伝送(カメラ映像)
これらはすべて無線通信であり、使用周波数、出力、技術基準適合(技適)が電波法で厳格に管理されています。
航空法の飛行許可・承認があっても、電波法違反は別途成立するという点は、よく誤解されるポイントです。
2. ドローン等に使用される通信システム
① ドローン等に使用される通信システム
| 分類 | 無線局免許 | 周波数帯 | 最大送信出力 | 主な利用形態 | 備考 | 無線従事者資格 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 免許又は登録を要しない無線局 | 不要 | 73MHz帯等 | 500mの距離において、電界強度が200μV/m以下のもの | 操縦用 | ラジコン用微弱無線局 | 不要 |
| 不要(技術基準適合証明等を受けた適合表示無線設備であることが必要) | 920MHz帯 | 20mW | 操縦用 | 920MHz帯テレメータ用、テレコントロール用特定小電力無線局 | 不要 | |
| 2.4GHz帯 | 10mW/MHz | 操縦用、画像伝送用、データ伝送用 | 2.4GHz帯小電力データ通信システム | 不要 | ||
| 携帯局 | 要(運用に際しては、運用調整を行うこと) | 169MHz帯 | 10mW | 操縦用、画像伝送用、データ伝送用 | 無人移動体画像伝送システム | 第三級陸上特殊無線技士以上の資格 |
| 2.4GHz帯 | 1W | 操縦用、画像伝送用、データ伝送用 | ||||
| 5.7GHz帯 | 1W | 操縦用、画像伝送用、データ伝送用 | ||||
| その他 | 要 | 2.5GHz帯 | 800mW | 操縦用、画像伝送用、データ伝送用 | 自営等BWA | |
| 要 | 4.7GHz帯 | 4.6~4.8GHz:200mW、4.8~4.9GHz:800mW | 操縦用、画像伝送用、データ伝送用 | ローカル5G | ||
| 28GHz帯 | 3.16W | 操縦用、画像伝送用、データ伝送用 | ||||
| 不要(携帯電話事業者又はBWA事業者の包括免許により運⽤) | 800MHz帯等 | 基地局によって制御される | 操縦用、画像伝送用、データ伝送用 | 携帯電話、BWA | 不要 |
② 免許又は登録を要しない無線局
発射する電波が極めて微弱な無線局や一定の技術的条件に適合する無線設備を使用する小電力
の無線局については、無線局の免許又は登録が不要です。
無人航空機には、ラジコン用の微弱無線局や小電力データ通信システム(無線 LAN 等)の一部が主として用いられています。
これらの小電力の無線局は、無線局免許や無線従事者資格が不要だが、技術基準適合証明等を受けた適合表示無線設備でなければなりません。
具体的には、技適マーク等の表示により確認します。
③ アマチュア無線局
無人航空機にアマチュア無線が用いられることがあります。
この場合は、アマチュア無線技士の資格及びアマチュア無線局免許が必要です。
アマチュア無線とは、金銭上の利益のためでなく、専ら個人的な興味により行う自己訓練、通信及び技術研究のための無線通信です。
そのため、アマチュア無線を使用した無人航空機を 、利益を目的とした仕事などの業務に利用することはできません。
④ 携帯電話
携帯電話等の移動通信システムは、地上での利用を前提に設計されています。
そのため上空で利用した場合、通信品質の安定性や地上の携帯電話等の利用への影響が懸念されています。
こうした状況を踏まえ、一定の条件下で利用することで、既設の無線局の運用等に支障を与えずに上空で利用できるように制度の整備がなされています。
携帯電話を無人航空機に搭載して利用する場合(無人航空機にSIM カードを挿入して利用する場合を含む)には、携帯電話事業者が提供する条件に対応した上空用プラン等の利用手続を行うことが必要である。
⑤ 5.8GHz帯ドローン用実験試験局
米国・欧州等の諸外国では、5.8GHz 帯を使用するドローン用無線局が広く普及しており、日本でも国際協調を図って周波数割当てを行っていくことが求められています。
5.8GHz 帯は、ETC(自動料金収受システム)等にも使用されている周波数帯であることから、総務省では、ETC等との周波数共用条件を考慮しつつ、令和6年11月、5.8GHz帯の周波数の電波を利用したドローン用無線局の実験運用を推進するため、特定実験試験局として使用可能な周波数の範囲等を定める告示を制定しました。
当該告示における特定実験試験局の使用可能期間は令和8年3月31日までとなっています。
3. 電波に関するトラブル
① 電波干渉による操縦不能
- 人口集中地区
- Wi-Fi機器が多数存在
- 2.4GHz帯使用
➡ 他の無線と干渉し、突然操作不能(フリーズ)になる事例です。
② 電波障害による映像ロスト
- 鉄骨構造物付近
- 高圧線・基地局周辺
➡ 映像伝送が途切れ、目視外に近い危険状態になります。
③ 技適未取得機器の使用(海外製FPV機など)
- 技適マークなし
- 出力不明
➡ 電波法違反(罰則対象)です。
4. 罰則(ドローン関連)
重要無線通信妨害罪(他の公共の電波妨害):5年以下の拘禁刑または250万円以下の罰金。(電波法第108条の2)
技適マーク無しの無線機使用・無資格で周波数帯使用:1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。(電波法第110条)
不法に無線局を開設・運用:1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。(電波法第110条)
5. まとめ
ドローンは技適マーク(技術基準適合証明)のついたものを選び、許可なく特定の周波数帯(1.2GHz帯、2.4GHz帯、5.8GHz帯など)を変更したり、高出力を出したりしてはいけません。
技適マークのない機器の国内での販売・使用は電波法違反です。
法律を知らなかったでは済まされないため、飛行前には必ず電波法と航空法の両方を確認し、違反しないように注意しましょう。

