ドローン規制法の概要

1. ドローンに関する法改正の経緯

① 首相官邸無人機落下事件

2015年4月22日、首相官邸屋上に小型マルチコプター(ドローン)が落下しているのが発見され、容器に放射性物質を示す表示があり、検査で放射性物質が検出された事件がありました。

発見当時、横転などはしておらず、通常の着地のような状態だったそうです。

ドローンは、中国のDJI社製のPhantomであり、同機種はアメリカで泥酔したシークレットサービス職員がホワイトハウスに落下させた事件やテロ組織ISILが偵察機として利用していたこと等で注目されていました。

この事件が社会的不安を巻き起こし、ドローン飛行に関する法規制がほとんどないことや、テロ対策の弱点が顕在化したことで、これを契機にドローンの法整備が本格化していきます。

② 無人航空機飛行許可承認申請制度開始

2015年12月10日航空法が改正し、特定空域・飛行方法(特定飛行)で200g以上の無人航空機(ドローンやラジコン機やヘリコプターなど)を飛行させる場合、飛行のたびに国土交通大臣の許可・承認が必要となりました。
当時は200g以上の無人航空機が対象で、郵送のみの申請でした。

これにより「飛ばす前の許可・申請」が制度的に確立し、運用面での審査基準整備が必要になりました。

③ 小型無人機等飛行禁止法

首相官邸無人機落下事件により、ドローンを用いたテロや犯罪行為が起こる恐れが明らかになり、重要施設などの上空でドローンの飛行を禁止する法規制が急務になりました。

2016年4月7日、重要施設などの上空でのドローン等の飛行禁止について定めるため、重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律(小型無人機等飛行禁止法)が制定されました。

小型無人機等飛行禁止法の小型無人機等にはドローンだけでなく航空法上の模型航空機(航空法では原則飛行許可申請がいらない)も入ります。

④ ドローン情報基盤システム(DIPS)

  • 2018年4月、郵送のみだった無人航空機飛行許可承認申請のオンライン申請であるドローン情報基盤システム(DIPS)開始。
  • レベル3(無人地帯での自動操縦・目視外飛行)飛行開始。
  • 特定飛行する場合、飛行情報共有機能(FISS)で飛行計画の通報と飛行記録の義務化
  • 飛行マニュアル添付の義務化。
  • 2021年9月、長さ30m以下の紐などの係留装置で飛行範囲を制限して行う飛行の許可不要、150m以上建造物周囲30m以内での飛行許可不要の開始。
  • 2021年12月、機体登録システム(DRS)で機体登録と登録記号の表示の義務化開始。
  • 無人航空機の定義が200g以上100g以上に規制対象の拡大。

⑤ ドローン情報基盤システム2.0(DIPS2.0)

飛行許可・承認申請を行う「DIPS」と、飛行計画を共有・通報する「FISS」など、手続きごとにシステムが分かれていました。

  • 2022年12月5日ドローン情報基盤システム2.0(DIPS2.0)開始。
  • DIPS2.0では、手続きごとに分かれていたシステムが統合され、1つのアカウントで全ての関連手続き(機体登録、飛行許可承認、飛行計画通報、事故報告など)を行えるようになりました。
  • 機体認証型式認証技能証明(国家資格)開始。
  • 飛行計画の通報飛行日誌を携行しないことによる罰則開始。
  • 無人航空機の第一種機体認証取得、一等無人航空機操縦者技能証明取得、第三者賠償責任保険加入を得てレベル4飛行(有人地帯の目視外飛行)開始。
  • レベル3.5飛行(補助者や看板での周知等による立入管理措置を撤廃)開始。

⑥ DIPS2.0大幅アップデート

  • 飛行許可申請期間短縮。
  • 飛行マニュアル(航空局標準マニュアル)アップデート。
  • 具備すべき資料の義務化
  • 飛行許可承認申請時、25㎏以上の機体は第三者賠償責任保険加入の義務化
  • レベル3.5飛行がDID地区でも可能に(第三者上空は飛べない)。
  • 2025年12月、飛行許可承認申請時の一部を省略していた、ホームページ掲載無人航空機とホームページ掲載講習団体等が行う技能認証(民間資格)の廃止

2. まとめ

  • 2015年4月22日、首相官邸無人機落下事件
  • 2015年12月10日、航空法改正、特定飛行を行う際の飛行許可承認申請義務化。
  • 2016年4月7日、小型無人機等飛行禁止法施行。
  • 2018年4月、ドローン情報基盤システム(DIPS)開始。
  • 2022年12月5日、ドローン情報基盤システム2.0(DIPS2.0)開始。
  • 2025年3月24日、DIPS2.0大幅アップデート。

法改正やDIPS2.0の運用、情報の陳腐化などドローンに関する制度が激変しています。
これはドローンの産業利用や趣味飛行などドローン市場が伸びるとともに、ドローン規制法の改正や関連許認可も増えると思います。
安心で安全な飛行をするためにも法や飛行許可承認申請などのルールはきちんと遵守しましょう