1. ドローンで空撮を行うときの要点
ドローンで空撮を行う際の要点は、法令遵守、安全管理、および撮影目的に応じた技術的設定の3つの観点からまとめられます。
① 法令遵守と事前の手続き
ドローンを飛行させるには、航空法をはじめとする各種ルールを遵守し、必要な手続きを行うことが大前提です。
- 機体登録とリモートIDの搭載:重量100グラム以上の無人航空機は、国への登録と登録記号の表示、および原則としてリモートID機能の備えが義務付けられています。(航空法第132条の2、航空法施行規則第236条の6第1項第2号)
- 飛行禁止空域の確認:「空港等周辺の上空」、「150m以上の高さの空域」、「人口集中地区(DID)上空」、および「緊急用務空域(消防・警察等の緊急活動時)」での飛行は原則禁止されており、あらかじめ国土交通大臣の許可が必要です。(航空法第132条の85第1項)
- 飛行方法の確認:「夜間飛行」、「目視外飛行」、「第三者または物件から30m未満での飛行」、「催し場所(イベント)上空での飛行」、「危険物輸送」、「物件投下」の方法による飛行原則禁止されており、あらかじめ国土交通大臣の承認が必要です。(航空法第132条の86第2項)
- 飛行計画の通報:特定飛行を行う際は、事前にドローン情報基盤システム2.0(DIPS2.0)を通じて飛行計画を通報しなければなりません。(航空法第132条の88)
- 飛行日誌の携行と記載:特定飛行を行う際は、飛行日誌を携行し、「飛行記録」や「日常点検記録」や「整備記録」を飛行日誌に記載しなければなりません。(航空法第132条の89)
- 具備すべき資料:2025年3月のDIPS2.0改正で申請の一部添付を省略できるようになりましたが、その添付資料を具備すべき資料として携行しなければなりません。
当局から確認を求められた場合、具備していなければ飛行許可承認を取り消される場合があります。
② 安全確保のための準備と運用
事故を未然に防ぐため、飛行前および飛行中の安全確認が不可欠です。
- 飛行前の点検:機体の損傷、バッテリー残量、通信系統の作動、気象状況(風速、雨、視程)を必ず確認します。
- 補助者の配置:操縦者が操縦に集中できるよう、周囲の安全確認や第三者の立入り監視を行う補助者を配置することが有効です。
- 緊急時の対策:故障や不測の事態に備え、緊急着陸地点をあらかじめ設定し、事故発生時の連絡体制(警察、消防、空港事務所等)を整えておきます。
③ 撮影目的に応じた技術的要点
良質な空撮画像を得るためには、機体性能の選定や適切なパラメータ設定が求められます。
- カメラの性能:画像の歪み(ローリングシャッター現象)を防ぐため、メカニカルシャッター方式やソフト補正機能を備えた機体が推奨されます。
- 機体性能:測量や点検用途では、画像データにGNSS等の位置情報が記録されることが重要です。
- オーバーラップ率とサイドラップ率:地図のようなオルソ画像を作成する場合、写真の重なり(ラップ率)が重要です。オーバーラップ率(前方)は80%以上、サイドラップ率(側方)は50〜60%を標準とします。
高低差のある地形(傾斜地など)では、標高が高い地点でラップ率が不足しやすいため、サイドラップ率を最大80%程度まで高めるか、オーバーラップ率を90%にするなどの調整が必要です。 - 飛行高度の設定:対地高度50m程度を標準とし、高低差がある場合は「最も高い地点+50m」に設定することで、画像欠損を防ぎつつ安全なマージンを確保できます。
④ プライバシーとマナー
- 第三者のプライバシー:空撮映像をインターネットで公開する場合は、「総務省のガイドライン」に従い、第三者のプライバシーを侵害しないよう十分注意する必要があります。
- 迷惑行為の禁止:不必要な高調音の発散や急降下など、他人に迷惑を及ぼす方法での飛行は禁止されています。(航空法第132条の86第1項第4号)
2. ドローンによる空撮の事例
近年、ドローンによる空撮は、趣味の撮影から業務利用まで急速に広がっています。
YouTubeやSNSだけでなく、建設・測量・災害対応など社会インフラの分野でも欠かせない技術となりました。
① ドローンによる空撮の種類
ドローン空撮と一言でいっても、用途によって撮影方法・機材・必要な知識は大きく異なります。
代表的な空撮分野を見ていきましょう。
⑴ 映画・CM・MV撮影
映画やCM、MVの撮影では、これまでにないドローンならではのダイナミックな移動撮影や俯瞰映像が活用されます。
国家資格(一等・二等無人航空機操縦者技能証明)が求められるケースも多い分野です。
⑵ YouTube・SNS向け映像
YouTube動画、Instagramリール、TikTok、Web広告などは、個人でも撮影できる人気の空撮ジャンルですが、 屋外での特定飛行では航空法の規制対象になる点に注意が必要です。
⑶ 測量・インフラ点検
オルソ画像作成や3D点群データ作成などは、国土地理院や国交省が示す公共測量マニュアルでも、 ドローンを使った写真測量の正式な手法として位置付けられています。
橋梁や太陽光パネルなどの点検、精密な測量でも使われます。
⑷ 観光地・自然紹介
観光PR動画、地方自治体プロモーション、自然風景紹介などは、地域や施設の魅力を空からのダイナミックな映像で発信します。
ただし、国立公園、文化財周辺、自治体条例区域などではでは独自の飛行規制が設けられている場合があります。
⑸ 不動産紹介
戸建て住宅、分譲地、マンション周辺環境、駅までの距離、街並みなどの不動産紹介は、立体的に伝えられる点が強みです。
第三者の住宅・人物が映り込む点が大きな法的注意ポイントになります。
⑹ 建設記録・工事進捗管理
建設業の進捗確認、定点撮影、工程管理、出来形管理などでは、国土交通省も「i-Construction2.0」の推進により、 建設分野でのドローン活用を明確に後押ししています。
⑺ 災害調査・被害確認
土砂崩れ、河川氾濫、倒壊家屋調査、人命救助などでは、災害時に人が立ち入れない場所を迅速に確認できる手段として活躍します。
⑻ スポーツ・イベント撮影
サッカー、ラグビー、マラソン、競輪、スノーボードなどのスポーツでの空撮は、選手の動きを捉える中継や練習分析に使用します。
イベントでは、祭りなどの様子や会場全体の撮影に使います。
この分野では、催し場所上空での飛行や第三者上空での飛行などに該当しやすく、高度な安全対策と許可承認が必須です。
最近では、ABEMA放送のボクシング中継でドローンが使われていました。
② 空撮の目的
空撮は「映像がきれい」という理由だけでなく、 業務効率化・安全性向上・情報取得という明確な目的で利用されています。
- 情報発信・広告:視覚的インパクトが強く、 静止画では伝わらない魅力を発信できます。(YouTube、SNS、Web広告、観光PRなど)
- 業務効率化・コスト削減:高所作業車や足場を使わずに点検できるため、 安全性向上とコスト削減につながります。(建設業の進捗確認、インフラ点検、農地確認など)
- 災害対応・人命救助:国も正式に活用を想定しており、 自治体・消防・警察との連携が進んでいます。(被害状況の早期把握、孤立者確認、二次災害防止など)
- 監視・記録:定期的な自動撮影との相性も良い分野です。(太陽光発電所監視、河川監視、工事記録保存など)
3. 空撮をやる際の注意点
空撮業務に携わる、あるいは実務を監督する際の注意点は、最新の法令改正への対応、適切な許可・承認手続きの実施、および現場での安全管理体制の構築に集約されます。
① 最新の制度改正(2025年12月施行)への対応
最も注意すべきは、飛行許可・承認申請における簡素化制度の変更です。
「ホームページ掲載無人航空機」および「民間技能認証」を活用した資料の一部省略運用は廃止されました。
これに伴い、申請手続きの簡略化を受けるためには、「型式認証機・機体認証機」の使用および「無人航空機操縦者技能証明(国家資格)」の保有が必須要件となります。(申請前に登録済み)
また、従来の民間団体が定めた飛行マニュアルも活用できなくなるため、今後は「航空局標準マニュアル」等を使用する必要があります。
② 法令遵守と機体・操縦者の管理
空撮を行う前提として、機体と操縦者のリーガルチェックを徹底しなければなりません。
機体登録申請、リモートID搭載、特定飛行の許可承認申請、飛行計画の通報、飛行日誌の携行と記録、具備すべき資料の携行は空撮を行う上での大前提事項です。
③ 現場での安全管理と立入管理措置
事故を未然に防ぐため、第三者上空での飛行禁止、立入管理措置、飛行前の点検、緊急時の連絡体制の実務的な体制構築が求められます。
④ 空撮に関係する主な法令
- 航空法・航空法施行規則(飛行禁止空域、飛行方法、機体登録など)
- 小型無人機等飛行禁止法(重要施設周辺での飛行禁止)
- 民法(プライバシー、肖像権侵害、所有権)
- 個人情報保護法(個人が識別できる映像、車のナンバー)
- 道路交通法(公共空間での撮影)
- 条例(自治体規制、公園条例、河川条例)
4. まとめ
近年、ドローンによる空撮(くうさつ)は、趣味の撮影から業務利用まで急速に広がっています。
YouTubeやSNSだけでなく、建設・測量・災害対応など社会インフラの分野でも欠かせない技術となりました。
空撮業務に携わる上で最も留意すべきは、令和7年12月の制度改正です。
これまで申請の簡素化に利用されていた「ホームページ掲載機体」や「民間技能認証」の運用が廃止されるため、今後は型式・機体認証機の使用や、無人航空機操縦者技能証明(国家資格)の保有が資料省略の必須条件となります。
運用の実務では、空港等周辺や150m以上の高度、人口集中地区(DID地区)、緊急用務空域の飛行禁止空域を正しく把握し、航空法の飛行方法によらない飛行など特定飛行に該当する場合はあらかじめ国土交通大臣の許可・承認を得る必要があります。
現場では補助者の配置や看板設置などの立入管理措置を講じ、第三者の安全を確保しなければなりません。
また、飛行前の機体点検や最新の気象情報の収集、飛行後の飛行日誌への遅滞なき記録も義務付けられています。







